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世界不況のカナリア? アメリカ長短金利差

アメリカ長短金利差まとめ(2017.7 投稿)

ポスト・リーマンショックの終焉

皆さんは、2008年リーマンショックを覚えていますか?

当時は「100年に一度の経済危機」と言われ、世界各国が緩和的な金融政策や財政出動によって対応してきました。

リーマンショックの震源地であり、世界経済のけん引役でもあったアメリカも同様に、FRB(米連邦準備制度理事会)による緩和的な金融政策が採用されてきました。

「短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)レートの利下げ」や「米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れ」などがそうです。

これらを通じて、市中に出回るお金を増やし(=通貨供給量の拡大)、冷え切った景気を暖めようというものです。
(日銀による「マイナス金利」や「国債買い入れ」などと同趣旨です。)

あれから約9年を経て、アメリカでは物価や賃金上昇には懸念があるものの、(日本に比べれば)景気回復が鮮明になりつつあり、NYダウ30やS&P500、Nasdaq総合指数などが過去最高値を相次いで更新しています。

このため、FRBでは景気の過熱感を警戒・けん制するとともに、来るべき景気のピークアウト(=景気悪化)に備えて、金融緩和策の見直しをゆっくりと進めています。

最近ニュースで聞かれることも多い、アメリカでの「利上げ」や「バランスシート正常化」というキーワードもリーマンショック後の金融緩和策からの出口戦略です。

長期金利と短期金利(イールドカーブ)

「イールドカーブ」とは、横軸に残存期間・縦軸に利回りを取った結んだグラフです。

通常の経済状況では、「短期金利」が「長期金利」よりも「低く」なるため、イールドカーブは右上がりになります。

ちなみに、日本銀行による「イールドカーブ・コントロール」は、この短期と長期の金利を操作していこうというのが眼目です。

※ 日銀の金融政策に関しては、過去記事『「絶対損しない投資」ってありますか?』もご覧ください。

イールドカーブ・コントロール

2016.9.21 日本銀行作成資料より(↑クリックして拡大↑)

「短期金利」は1年以内の金利、「長期金利」は1年以上の金利(一般的には10年国債の金利)とされ、長期金利-短期金利の差が「長短金利差」と言われています。

なお、アメリカのイールドカーブの最新情報については、ファイナンシャルタイムス社のHPでもご覧になれます。
→ こちらをクリック
注)デフォルトでは英国(United Kingdom)のグラフが出ます。グラフ表題からアメリカ(United States)を選んでください。

このグラフが右上がり→水平(フラット化)→右下がり(逆イールド化)となると、長短金利差の逆転が進んでいきますので、一つの参考になります。

米長短金利差の縮小は「炭鉱のカナリア」?

ところで、皆さんは「炭鉱のカナリア」という言葉をご存知でしょうか?

カナリアは常にさえずっていますが、メタンガスや一酸化炭素といった有毒ガスを検知すると鳴き声が止むそうです。

このため、昔はカナリアを炭鉱の中に連れて行くことで、鉱夫が有毒ガスの危険をいち早く察知できたと言われています。

実は「アメリカの長短金利差」こそが、アメリカ経済が停滞に入る直前に異常を知らせる「カナリア」だとする説があります。

アメリカ長短金利差グラフ

具体的に見てみます。
FRBからダウンロードできるデータを使って、1982年から現在までの長短金利差の移動平均をとったグラフです。

グラフの中の青い縦棒がアメリカの景気の天井から底に向かう、いわば「景気の悪化期」に当たる期間です。

注目してもらいたいのは黄色の折れ線グラフ。
このグラフで表される長短金利差が景気悪化に転換する直前(=景気がピークになる直前)にマイナスになっています。
(緑色の〇囲い部分)

長短金利差がマイナスになるということは、冒頭書いた「短期金利が長期金利よりも低くなる」という常識がひっくり返り、「短期金利が長期金利よりも高くなる」という現象が起きていることを示しています。

なぜ、こうなるのかについては色々な説があるようですが、個人的には、景況感において「近い将来における過剰期待と遠い将来における沈滞懸念」が合成された結果ではないかと思います。

いずれにしてもアメリカの長短金利差の動向には注意が必要な時期に入ってきているようです。

そしてコロナショックも的中!(2020.5投稿)

2020年1月頃から中国武漢から広がりを見せ始めたコロナウイルス。

2020年3月頃には、コロナウイルスはアメリカ・欧州へと広がり、そしてWHO(世界保健機関)によるパンデミックの宣言…

これらを悪材料として、過去最高値を更新していたNYダウは一気に急降下。

NYダウでは、取引一時停止措置であるサーキットブレーカーが1週間に4回発動されるという異例の事態になりました。

また、アメリカの失業者も過去最大の数にのぼり、4/21には石油の主要指標であるWTI先物の価格が一時マイナスになるなど、景気の後退が明らかになってきました。

ちなみに下記ツイートは、2020年4月21日の午前6:05 に驚いて投稿したものになります。

しかし、この景気失速は、コロナウイルスの影響だけに起因するものではないと考えます。

当サイトでは、アメリカの長短金利差が「逆イールドから順イールドに戻っていく過程で景気後退(リセッション)が訪れる」という経験則に基づいて繰り返し警鐘を鳴らしてきました。

結果的には、2019年10~11月くらいで逆イールドから順イールドに向かう動きが確認でき、2020年1月には順イールドに入ってきていますので、今回の暴落の予兆をギリギリ捉えられたと思っています。


ちなみに僕自身はというと、この逆イールドの発生を契機として、予防的措置で iDeCoの商品を先進国株式から国内債券にスイッチングしています。

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投稿のサマリー 楽天証券にて2017年からiDeCoを開始 これまで一貫して「外国株式 100%」で積立運用 今回これまでの積立分を「国内債券 100%」に変更(スイッチング)、今後の積立配分も同様に これに合わ[…]

おかげで今回の大暴落の影響は、最小限で済みました。(ただしNISAの方は株式だったので影響を受けましたが。)

もし当サイトをご覧いただいていた方で、同様のリスク回避ができた方々がおられれば、愚直に長短金利差を紹介してきた甲斐があったというものです。

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