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2024年NISA改正は資産形成の福音か?

はじめに

令和5年度与党税制改正大綱(以下「与党大綱」)の取りまとめが大詰めを迎えています。

防衛費増額のための財源やエコカー減税の延長なども上がっていますが、個人投資家から特に注目されているのが「NISA制度の改正」です。

僕自身がNISAとiDeCoを併用していることもあり、当サイトでは平成29年度与党税制改正大綱での「つみたてNISA」導入時から、ずっと情報を追いかけてきています。

現時点では報道ベースでの情報になりますが、ある程度全体像が見えてきましたので、NISA改正の概要や展望などをまとめてみました。

これまでのNISAの流れと現行制度

NISAは「少額投資非課税制度」と呼ばれ、将来の資産形成につながる投資を広く呼び込むため、株式や投資信託への小口投資を優遇する制度になります。

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して20.315 %(所得税15%+株式等譲渡所得割など5%+復興特別所得税 0.315%)の税金がかかります。

これが「NISA口座(非課税口座)」内であれば、毎年一定金額の範囲内で購入した株式や投資信託から得られる利益が非課税になる=税金がゼロになる制度です。

ちなみに、NISAは、イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をベースにしており、日本版ISAなのでNISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)となっています。

その沿革を見てみると

2014年:NISA(現 一般NISA)開始

2016年:20歳未満対象のジュニアNISA開始

2018年:つみたてNISA開始

となっていて、段階的に導入されてきています。

また、それぞれの制度ごとに、対象者・非課税期間・非課税額・対象商品に至るまで、色々な違いがあります。

(金融庁資料より)↑クリックで拡大↑

また、これらの制度は2023年までとなっており、2024年1月からは以下の制度見直しが行われることとなっていました。

(金融庁資料より)↑クリックで拡大↑

ところが、この2024年の「新しいNISA」制度は証券会社からの評判が悪かったことに加え、岸田首相肝いりの資産所得倍増プランを具体化する過程でボツに。

今回の与党大綱を機に、2024年1月からの「新しいNISA」と「つみたてNISA」の2本立て路線を一旦白紙とし、NISA制度を一本化して再出発を図ろうとしているようです。

今回のNISA改正の概要

それでは、2024年からのNISA(以下「改正NISA」)はどうなっているのでしょうか。

現時点では報道ベースの情報しかないため、確たることはわかりませんが、日経新聞の記事をベースに各社報道を見ていくと、改正NISAは概ね次のような制度になりそうです。

 つみたてNISA枠、3倍の年120万円に 税制改正方針: 日本経済新聞 (nikkei.com)

想定される改正NISAの姿

  • NISA制度は恒久化
  • 現在の一般型とつみたて型の混合型。一般型は「成長投資枠(仮称)」に名称変更。
  • 年間投資枠は、成長投資枠が240万円(現行の2倍)、つみたて型が120万円(現行の3倍)に。
  • 売却益や配当金等に税金がかからない非課税の投資期間無期限に。
  • 生涯投資枠上限1,800万円(1,500万円との報道もあり)うち成長投資枠は1,200万円
  • 改正NISAは2023年までの現行制度とは分離の見込み。
    よって、これまでのNISA制度活用の有無にかかわらず、2024年以降に上限額まで利用可

これは良い!

ここまで出てきている情報で、個人的にこれは良いと考える点を何点か。

①制度の恒久化

そもそも若い世代を含めた資産形成を図ろうとする制度なのに、一般型については投資期間が10年足らずしか確約されていないなど時限措置だったのは大きな問題でした。

今回、改正NISAで恒久化されることは、地味ですが大きな前進です。(始めから恒久化すべきだったとは思いますが。)

②年間投資枠の拡大

成長投資枠が240万円、つみたて型が120万円と、現行制度から2~3倍に増えたことは意義深いです。

「そんなに投資する資金がない」という方もいらっしゃると思いますが、制度がスタートする2024年に50歳の人(僕自身もそうですが)が60歳退職とすると、現役の期間は10年間しか残っていません。

これまで資産形成に向けた投資環境が必ずしも整っていなかったことを考えると、残りの現役期間に少しでも投資の機会が増えることは、投資リスクがあるとはいえ、意味があると考えます。

また、240万円、120万円ともに12の倍数となっており、1年を通じて毎月定額を投資するのに計算しやすくなっています。(現行制度では12で割り切れないため、つみたて型では端数が生じることがありました。)

③非課税期間が無期限

①とも関係しますが、非課税期間が無期限となることで、特に資産の取り崩しを行う際、まずは非課税の配当金を第一に考えられることは大きいと思います。

最初に書きましたが、NISAの非課税期間が終了してNISA口座から一般口座に移行すると、配当金等に20%の税金がかかります。これは80%分の利益しか得られないのと同じです。

このため、資産形成期に非課税の恩恵をいくら受けたとしても、いざお金が必要な時期に課税されては、大本の株式や投資信託の売却する時期が早まってしまうからです。(さらにその売却益にも20%の税金がかかってしまいます。)

これは問題では?

一方、個人的にこれはどうだろうと首をかしげる点を何点か。

①生涯投資枠の上限

まだ未確定ですが、生涯投資枠の上限が1,800万円で、うち成長投資枠を1,200万円、つみたて型を600万円とすると、年間投資枠の最大値の5年分となります。

 成長投資枠:1,200万円/年間投資枠240万円=5年
 つみたて型: 600万円/年間投資枠120万円=5年

生涯投資枠が年間枠の5倍というのは、あまりにショボいと感じます。

もちろん5年で枠を使い切るには年間360万円必要なので生涯投資枠は富裕層対策だとは思いますが、1,800万円の投資枠は毎月5万円×30年で使い切ってしまいます。

例えば生涯投資枠については年間投資枠を設けた上で、1,800万円か65歳到達までの残月数×10万円かのいずれか多い方にして、若年層の長期資産形成を促す方が良い気がします。(ちなみに本家イギリスのISAでは全体限度額は無制限とのこと)

②年間投資枠における成長投資枠とつみたて型とのバランス

年間投資枠を見ると、成長投資枠240万円=つみたて型120万円×2倍となっています。
これでは、成長投資枠の活用を奨励しているかのように見えてしまうのではと懸念します。

 

資産形成の王道は「長期・分散・低コスト」と考えており、その意味で、特に改正NISAから投資を始める層に対しては、成長投資枠≦つみたて型の方がメッセージとしては良かったのではないのでしょうか。

まとめ

 以上、2024年から導入が検討されている改正NISAについて、僕なりの所感を述べてきました。

 いずれも報道ベースの情報であり、実際の与党大綱が出てこないと内容や詳細がみえないところもありますが、少なくとも現行制度よりはより良い制度に変わってくれることを切に期待しています。

 また、改正NISAの概要が判明したら「改正NISAとiDeCoを使ったスマート資産形成」みたいな記事を書いてみたいと思っています。

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