金利差グラフは 10年-3か月 と 10年-2年 を掲載
過去記事の要約は 2ページ目に集約
はじめに
2020年に発生したコロナの世界的広がりによって、一時期大幅な株価下落と景気後退のリスクが拡大。
それに対応するため、アメリカをはじめとする世界的な金融緩和によって、一気に株式市場は回復し、空前の株価回復につながりました。
しかしその後、「ロシアのウクライナ侵攻」を契機として、金融政策の大きな転換が訪れます。
そして、現在、アメリカの「10年ものと2年もの」に長短金利差の逆転が現れています。
これが「10年ものと3か月もの」にも現れ、そして解消する段階になれば、再び不況の始まりにつながるのではと懸念しています。
本記事はこれから定期的に更新していきますので、皆さんの羅針盤になれば幸いです。
アメリカの「長短金利差」の持つ意味
「短期金利」は1年以内の金利、「長期金利」は1年以上の金利(一般的には10年国債の金利)とされ、長期金利-短期金利の差が「長短金利差」です。
一般的には、長期金利>短期金利なので「長短金利差」はプラスです。
しかし過去に何度かマイナスになったことがあり、その後プラスに転じていく段階で不況が発生しています。

この「アメリカの長短金利差の逆転(=逆イールド)」こそが、アメリカ経済が不況に入る直前に異常を知らせるという説があります。
参考:2019年長短金利差のアニメ化
2019年の長短金利差の動きを時間軸でわかりやすく見ていただくため、2019.1~12までのグラフをアニメーション化しています。
特に 右側の2019年1月からの動きをご注目ください。
素人がつくったものなので、カクカクしているのはご容赦ください。
途中で緑の〇が出てきますが、ここからマイナス圏に突入したと思ってください。

↑クリックで拡大↑
最後の方で、グラフがⅤ字反転しているのが確認できると思います。
この後、アメリカ景気は2020年2月から4月まで、景気後退期を迎えることになりました。
2023.8のアメリカ長短金利差
本稿では、米国財務省証券の市場利回りを基に、「長期金利」を10年・「短期金利」を3か月として長短金利差を出しています。
さらにその変化を平滑化するため、90日移動平均で処理しています。
また、ご要望のあった「短期金利」を2年もので同様に比較した資料も載せています。
10年-3か月のマイナス金利が進行中!
さて早速、最新の状況です。
2022.6月頃にピークをつけた金利差は、ほぼ垂直に下落。
「10年-3か月金利差」が、2022.10月頃からマイナス圏に入ってきました。
そしてついに、90日移動平均もマイナス圏に突入。しかも過去に例のないレベルまで急激に下落しています。
(グラフの見方は記事2ページを参照)

本稿で取り上げている10年-3か月について、どうなっているかを個別に見ていきます。(直近 2023/8/31現在)
短期金利は3カ月ものが 5.56%
長期金利は10年ものが 4.09%となりました。
このため、10年-3か月金利差の動向は次のとおりとなっています。
直近 8/31現在 ▲1.47%(前月比 +0.11%)
直近 90日平均 ▲1.59%(前月比 +0.05%)
グラフからもわかるように、過去に例がないほど大きくマイナス圏に下がっていた長短金利差が、そろそろ底打ちのきざしを見せ始めています。
こうなると「底打ち→不況の発生」というこれまでの流れと同じ道筋が発生するかもしれません。
10年-2年の金利差はマイナス圏に定着
参考として10年-3カ月利回り(黄色)と10年-2年利回り(緑色)を 90日移動平均処理した直近1年間のグラフも掲載します。
2022.1月頃を境に、より長期の金利である緑色(10年と2年の差)が急速に下がり、2022.8月頃からマイナス圏に入っています。
さらに、2023.2月頃には黄色のグラフ(10年と3カ月の差)がそれを下回る状況が現れました。

具体の数字を見ていきます。
10年-2年利回り(緑色)の方は、直近のデータでその差が ▲0.76%。
10年-3か月利回り(黄色)の方は、直近のデータでその差が ▲1.47%。
90日移動平均では、10年-2年利回り ▲ 0.77%、10年-3か月利回り▲ 1.47%となっています。
このため、2年ものと3カ月ものの状況も、「底打ち→プラス圏に再浮上→不況の発生」というシナリオを着実に描いているように見えます。
逆イールドの拡大
アメリカの逆イールドは他の期限においても広がりつつあります。
以下のグラフは、1年ほど前の2022年6月1日と直近の2023年8月31日の金利を比較したものです。
(上が8月の金利になります。)

見ていただいたとおり、ほとんどの期間で逆イールドが進行していることがわかります。
最後に
ECBの利上げ幅抑制の期待もあり、FRBのインフレ抑制優先の金利政策が方向転換するという見方もありますが、そうなるとインフレ抑制に歯止めがかからない懸念も錯綜しているようです。
また、日銀においてもイールドカーブコントロール(次ページ参照)の見直しの動きがみられつつあります。
少なくともアメリカの景気に関しては、そろそろ危険水域に入りつつあるものと認識しています。
(難しいのは、ここからどのくらいの間を空けて景気後退期に入るかが見えにくいところです。)
いずれにしても、長短金利差の分析によって、アメリカの景気ひいては世界経済の行方を一歩先に見通せる可能性があると考えています。
今後も定期的にご紹介していきます。
→ 次ページでは長短金利差とグラフの見方を解説
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